次の箇所では、遭遇する敵について見る。エペソ人への手紙の第六章で特に述べられているこの敵は、この世、肉、悪魔ではない。「なぜならわれわれが格闘しているのは肉や血に対してではなく、主権者たちに対して、権力者たちに対して、この暗闇の世の支配者たちに対して、高きところ(または天上)にいる悪の霊に対してだからです」。つまり、われわれは人類と戦っているのではないのである。われわれの戦いは人という道具に対するものではなく、この道具を利用しているサタン自身に対するものなのである。この現実の敵はわれわれの外側の目には見えない。サタンは目に見えないが強力な敵である。可視的・人間的・物理的なすべてのものの背後や下にサタンがいる。それゆえ、ここで検討されている敵は内側ではなく外側の敵である。

 ここで、「肉」は敵ではないのですか?「肉」がわれわれの内側にないのですか?という反対があるかもしれない。その通りである。しかし、次のことを見落とさないようにしようではないか。もし戦いのための備えが実際になされているなら、もはや肉が自由にわれわれを妨げることはないのである。最後までわれわれに付きまとい続けるこの悪への傾向性は、もはや力を持つことは無いし、キリストの主権に服するようになるのである。

 この戦いは内なる戦いではない。そうだったなら反乱だっただろう。信者は実際には自分自身を征服することができない。キリストに王座を与えることにより、ただキリストの条件に従うことにより、自己は征服されるのである――肉は活動停止に保たれ、死の立場に保たれるのである――それは信者が自由に主の敵と戦うためである。

 われわれは反乱と真のキリスト者の戦いとを、とても用心深く区別しなければならない。もしわれわれが自分に関して神に御自身の道を進んでもらうことを望んでいないなら、もし神の御旨に逆らって自分の意志を立てているなら、これは確かに争いである。しかし、それはキリスト者の戦いではなく、「信仰の良き戦い」でもない。まるで次のような兵士のようである。その兵士は祖国の敵と戦うために出かけて行ったのだが、ある時は行軍中に敵の側面に出くわして自分の部隊の中で自分の祖国に対して戦い、またある時は自分自身の軍隊の部隊に対して戦ったのである。われわれが真に主の側に着かない限り、主に対して真に忠実でない限り、われわれはこの手紙に描写されている戦いに従事することは無い。

 エペソ人への手紙のこの六章の十節以降で要求されている諸々の条件を真に満たしている信者は、グルナルが述べているように、「キリストにかくまわれている人」である。サタンはこの意味をわれわれよりもよく知っている。サタンは非常に経験のある将軍なので、難攻不落であることが分かっている壁に向かって自分の力を浪費したりはしない。別の手段を用いる。それゆえ、われわれがこのように強固な守りの中にある時、サタンは自分の力でわれわれに立ち向かって来ない。彼は、われわれをわれわれの要塞からおびき出すために、われわれに対して「策略」――巧妙な、秩序だった計画――を巡らす。使徒はそれらのことを「悪魔の策略」と述べている。その狙いは信者に信仰の立場を放棄させることである。もし信者に疑わせることができさえするなら、あるいは落胆に耽らせることができさえするなら――なぜなら落胆はすべて悪魔から来るからである――サタンの計略は成功する。なぜなら、信者が信仰の立場を放棄する瞬間、信者はサタンの力の下に陥るからである。したがって、この戦いは「良い戦い」(良いというのは、それが常に勝利の戦いだからである)であるだけでなく、「信仰の良き戦い」でもある。なぜならそれは本質的に、信頼の姿勢を維持して信仰の立場にとどまる問題だからである。

 次のことを思い出すなら、最も弱い信者でも勇気づけられるはずである。この難攻不落な要塞の中にいる「キリストにある赤子」は、同じ立場を取っている「キリストにある父親」と同じくらい安全なのである。しかし、最も進んだ聖徒といえども、この要塞の中にとどまってキリストに自分自身と敵との間に立ってもらうのをやめる瞬間、水のように弱く無力になる。

 武具のいくつかが挙げられている順序は、ローマの兵士が実際に武具を身に着けた順序である。武具を身にまとったら、兵士が次になすべきはただ剣や槍を取ることだけである。ここで、聖パウロが槍を省いているのは興味深い。しかし、この装備こそまさに、要塞の中で警護している時、兵士が身に付けそうにないものなのである。


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