ある有能な優れた神学者の以下の見解は注意深く熟読するに値する。「われわれは従来通り、今も次のような見解を支持する。すなわち、ローマ七・一四~二四でパウロは『再生された人の意識』から語っているのだが、これは、そのような経験をすることが再生された人にも許されている、ということではない――むしろ、そのような経験を再生された人は容赦してはならない。一人の同じ人が肉的であって罪へと売られている(七・一四)にもかかわらず、他方で、キリスト・イエスにある命の霊によって罪と死の法則から解放されている(八・二)、と述べるのは、確かに両立できない矛盾のように思われる。

 しかし、使徒は実際にこの二つの状態を、今の自分の経験に属するものとして並置している。彼が七・一四で述べているのは、自分は以前は肉的物質から成っていて罪の下に売られていた、ということではなく、これが自分の天然的成り立ちであり、この矛盾が自分と神の霊的な法則との間に存在する、ということである。彼は現在のことを述べているのである。彼は続けて、自分は律法を受け入れているが、それは善を行う助けにはならず、むしろ罪のせいで、自分の意志に反して、神の御旨に反することをしてしまうことを示しているが、この間、彼はずっと現在のことを述べているのである。

 この実証済みの今の主張を、七・七~一三ではさらに考慮に入れなければならない。すなわち、使徒はそこでも経験上の事実――その事実は当時は過去のものだったが――を歴史的な形で述べているのである。彼はそこから自分の幼年期を振り返る。そして、どのように律法の要求を徐々に意識するようになったのかを示す。そして、自分の内に現存していたが個人的振る舞いの中にはなかった罪が、どのように彼の個人的な罪となり、自ら死を招く原因となったのかを示す。一三節で述べられているように律法の目的は救いに導くことだが、これを彼はこのように痛々しく経験したのである。一四節以降、使徒が続けて描写しているのは、律法を行うことを望んでいる彼が、律法の光の中で自分自身と自分の行いを暴露されるのをどのように経験したのかということである。どのクリスチャンも自分自身の経験から、使徒が述べていることを認めないわけにはいかない。神の律法したがって神の御旨が自分の喜びである――すなわち、自分は善を望んでおり悪を憎んでいる――と認めることもできるなら、その人は幸いである。特に、罪は自分の意志に反するものであり、それから自分は急いで逃げ去る、という具合に、罪は自分の最も深い性質とは無縁であることを示すような方法で、そう認められる人は幸いである。しかし、自分自身の経験からこれを認めることができるだけで、その源がキリスト・イエスにあるこの新しい命の御霊が自分をしつこい罪と死の状態から解放した事実を認められない人は禍いである。罪と死の状態は律法によって取り除かれず、ただ明るみに出されただけだった。この解放は、律法によって善なるものになびいたその人の意志が、無力ではあるものの、今や実際に善を行えるようになり、自分の内に働き続ける死に対して、優勢で支配的な命の力として、立ち向かえるようになるためである。この命の力が最終的に栄光の中で勝利するのである」(デリチェ『聖書心理学体系』四五三~四五五頁)。

 しかし、この見解は次のような反対を受けてきた。「もし私がキリストの中にあり、しかも『私はキリストの外にある』と叙述しているとするなら、それが実際に述べているのは、いま私が実際に何者なのかではなく、かつて私はキリストの外にあったということである」(ピリピ)。

 さて、デリチェが述べているように、自分自身の心の中を覗いてみさえすれば、これが何という詭弁であるかが直ちにわかる。キリストにある人はみな、実際の経験から、歩みと生活でキリストの外にあることがどういうことかを知っている。信者はみな、悲しむべき経験から、キリストの中に住むのをやめることがどういうことかを知っている。両方の生活を同時に生きること――すなわち、交わりに関してキリストの中にあることと、同じ意味で任意の時にキリストの外にあること――は可能である、ということではない。これによって生じる反対は、「キリストにある」という句には一つの意味しかありえない、という仮定に基づいている。しかし、この句の二重の意味、あるいはこの真理の二重の面こそ、われわれが明らかにしようとしてきたことである。


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