罪を犯すことについて話す時、もちろん、それは行いを意味する。しかし、行いという言葉は外面的なものだけを意味するのではなく、純粋に内面的なものをも意味する。違反は、それゆえ、神の律法を外面的に破ることだけに制限してはならない。それは、神の御思いと御性格に反する、魂のすべての内的行いを含む。

 ローマ六章が特に考察している罪の側面は、支配する力としての側面である。罪はそこでは、信者を支配しようとする者として人格化されている。

 堕落に何が伴っていたのか、考えよ。堕落は人の上に違反としての罪による刑罰をもたらしただけでなく、支配的原理としての罪の下で人を奴隷にした。罪は人間存在の中枢の中に入り込んでいる力であり、そこに自らを確立して、人性のあらゆる部分をその支配下に置いている。罪は本質的に神に敵対している一つの原理であり、人の意志と愛情を乗っ取ることによって、人を神の敵とし、公然と神に反逆するよう人を導く。こうして人は罪の奴隷となったのである。

 われわれの性質の中心部分から、罪は人全体を支配する。われわれの体は「罪の体」(ローマ六・六)である。すなわち、「罪の(罪に属する)体」である――「誘惑の入口としての、また、罪の仲介者としての(中略)物質的体」(ディーン・ボーハン)である。われわれは罪の支配の下にあり、他方、体はそれを通して罪が自らの働きを遂行する道具である。体は罪に所有されており、罪の支配下にある。

 このローマ六章で、使徒は罪に関する信者の現在の立場を示している。キリストの十字架刑は罪に対する信者の立場を完全に変えた。キリストの死は、違反としての罪の結果から信者を分離しただけでなく、主人としての罪の権威から信者を分離した――信者を解放したのである。

 キリストが自分のために死んで下さったことにより、自分は罪の刑罰から完全に解放されたことを、信者は理解する。同じように、信者には次のことを理解する特権がある。信者はこの死の中でキリストと一体化されているので、信者は支配的原理としての罪からも解放されているのである。その力は破られた。この意味で信者は「罪から解放」されている(ローマ六・一八、二二)。

 この六章における使徒の目的は、「キリストが罪に対して死なれた」時、信者がどれほど完全にキリストと一体化されたのかを示すことである。この死の意義の中に完全に入り込むことは、われわれの昔の主人である罪をこれ以上取り扱わなくても済むように、キリストがわれわれを解放して下さったことを理解することである。今や「神に対して生きて」おられるキリストの中にある立場を取る特権を、信者は持っている。この観点から、信者は今後、罪を見なければならない。信者は今も、また永遠に、昔の主人と昔の支配から自由である。十字架が一度限り永遠にこのつながりを断ち切ったのであり、あっけなく断ち切ったのである。昔の主人である罪に対して、決定的かつ完全な断交を成し遂げたのである。

 「これがキリスト者の聖化の神聖な秘訣である。これは単純な天然的道徳とは根本的に異なる。後者は人に対して『あなたがなりたい者になれ』と言う。後者は信者に対して『あなたが(キリストにあって)すでにそうであるところの者になれ』と言う。これは道徳的努力の基礎に、一つの積極的事実を据える。この基礎に信者はいつでも立ち返って、あらためて頼ることができる。こういうわけで、信者の労苦は不毛な渇望という結果になることはないし、絶望に終わることもない。

 信者は罪から徐々に解かれるのではない。信者はキリストにあって一度限り永遠に罪と手を切るのである。意志の決然たる行いにより、信者は完全な聖潔の領域の中に置かれる。そしてその領域の中で、個人生活の漸進的更新が進む。この二つ目の福音の逆説である信仰による聖化は、一つ目の逆説である信仰による義認に基づく」(ローマ六章についてのゴデット教授の言葉)。

 十字架はこの解放を効率的に成し遂げる要因である。罪の支配する力からの解放は、すべての信者がただちにあずかれる特権である。それは実際的前進だけでなく真の奉仕の必須条件、もしくは出発点である。このような成長や奉仕は、成熟した信者だけでなく若い回心者にも可能である。それゆえ、罪の支配からの解放は、赦しを受けるのと同じように、われわれが信仰によって要求できる祝福である。われわれはそれを、キリストがわれわれのために買い取って、われわれを直ちに受け入れるために獲得して下さったものとして、要求することができる。われわれは罪から解放された者として、そしてわれわれの主であるイエス・キリストにあって神に対して生きている者として、前進することができる。これが支配的原理としての罪からの解放である。


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