4.世のための小羊

 舞台はエルサレム。この都は近隣や遠方からの訪問者で混雑している。あの大いなる恐るべき日、この山々の都には二百万人いた、とある歴史家は記録している。偽善者のパリサイ人たちは悲しげな面持ちで動き回り、差し迫った悲劇のために心を痛めている少数の人々の涙を嘲っていた。狭いうねり道の一つに、十字架を負った一人の人が来た。

「悲しみの人とは何という名!
 人の子が来られたのは
 堕落した罪人たちを再生するためだからです――
 ハレルヤ!何という救い主!」


 ナザレのイエスはカルバリへ向かう途上だった。群衆の叫びがますます大きくなって行った時、太陽は恥じてその顔の光を隠した。磔殺の恐るべき瞬間のために釘が用意された。バプテスマのヨハネが十字架の人を指差して、「見よ、世の罪を取り除く神の小羊」と言ったのは、僅か三年前のことだった。

 ヨハネが彼を小羊と呼んだのは偶然ではない。それは思いがけない言葉ではなかった。彼は御霊の油塗りの下で語ったのである。神に感謝せよ、彼は小羊だった。アベルの時代、小羊が人のために屠られなければならなかったが、彼は神の目がアベルの時代に予見していた小羊だった。これは――あらかじめ運命づけられ、定められていた――神の小羊、救いの橋の要石であり、それを通って全人類は真珠の門に至る道を通らなければならなかった。

 時が過ぎた。イエスは十字架に懸かった。その血が、彼御自身が創造した地面に染みをつけた。彼の聖なる口から漏れた言葉は、われわれの心に消えないよう刻まれている。その後、この犠牲が頂点に達した!彼の心がエデンの園に思いを馳せていた可能性はあるだろうか?そこで始まり、ここで完全に啓示された計画について、彼は考えておられただろうか?地上の乾燥した荒地を潤す川のように、神の御心から流れ出たあの素晴らしい恵みについて、彼は考えておられただろうか?彼が頭を垂れて死ぬ前に、「成就した」と言われたのをわれわれは知っている。世の基が据えられる前から屠られていた小羊は、御自身をいけにえとしてお与えになったのである。

 三日過ぎた。時は復活の朝だった。その園の木々の影の下から、復活したキリストがマグダラのマリヤを呼んで、彼女の悲しみの涙を賛美の真珠に変えた。彼は後ろに下がった。彼女が彼の祝された足の周りに両手を投げ出し、それを抱きしめて、礼拝と感謝のキスを浴びせようとしたからである。しかし、イエスは後ろに下がって言われた、「私に触れてはなりません。私はまだ、私の父でありあなたの父である御方のところに昇っていないからです」。なぜ彼はそう言われたのか?答えは一つしかない。

 彼は栄光の法廷で、代々の裁き主の御前に、いけにえの贖いの血を捧げなければならなかったのである。この血は受け入れてもらえるだろうか?神の要求は満たされるだろうか?「神聖な愛、すべてに優る愛」は、永遠なる神の要求を完全に満たすだろうか?全人類をして喜びで歌わしめよ!イエスは栄光の法廷から戻って来て、「もう私に触れても大丈夫です」と弟子たちに言われたのである。

 救いの扉が開かれた――罪深い地上から聖なる天へと通じる大路に、無代価で近づけるようになった。遂に、血を降り注がれた道が恵みと栄光の懸崖に達して、最終的に星々のカーテンの後ろで見えなくなった。救いが地に臨んだ。神の小羊はその命をお与えになった。そしてエルサレムからユダヤまで――実に、地の果てまで――喜ぶ弟子たちは出て行って、「みな来たれ」という喜びの便りを告げ知らせたのである。

 彼らが出て行ったのは、彼らの十字架に付けられた主は世のための小羊だったからである。四匹の小羊とは、人のための小羊、家のための小羊、国民のための小羊、世のための小羊である。


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