「私は、私の主であるキリスト・イエスを知る知識の卓越性のゆえに、すべてのことを損と思っている。キリストのゆえに、私はすべてのものを失ったが、それらのものを糞土のように思っている。それは、私がキリストを得るためであり、律法による自分の義ではなく、キリストを信じる信仰による義、すなわち、信仰に基づく神からの義を受けて、キリストのうちに見いだされるようになるためである。すなわち、キリストとその復活の力とを知り、その苦難にあずかって、その死に同形化され、なんとかして死者の中からの復活に達したいのである。私はすでにそれに達したとか、すでに完全になっているというのではなく、ただ捕らえようとして追い求めているのである。そうするのは、キリスト・イエスによって捕らえられているからである。兄弟たちよ、私はすでに捕らえたとは思っていない。ただこの一事に励んでいる。すなわち、後のものを忘れ、前のものに向かって体を伸ばしつつ、目標を目指して走り、キリスト・イエスにあって上に召して下さる神の賞与を得ようと努めているのである。だから、私たちの中で完全な人たちは、そのように考えようではないか。しかし、何であれあなたたちが違った考えを持っているなら、神はそのことも示して下さるであろう。」(ピリピ三・八~十五)


 この「完全」という言葉は、それが救いに関して用いられる時、大きな誤解を生んでいる。そのせいでわれわれは、新約聖書の教えの系譜や、クリスチャンの完全の何たるかについての新約の思想を、何度も何度も繰り返さざるを得ない。

 いま読んだこの教えでは、「完全」という言葉が二回用いられていることがわかる。

 第一に、将来達すべき完全、死者の中からの復活――第一の復活――まで保留されている完全である。

 第二に、得ていることを使徒が告白している完全である。使徒はこの祝福を受けている人々に宛てて、「完全な人たちは、そのように考えようではないか」と述べている。

 人々は宗教以外のことならどんなことでも勤勉に完全を追い求める。農業、科学、芸術、発明――事実、救い以外のあらゆること――で完全に達しようと懸命である。束の間の物質的なものや滅びるものにこの言葉を適用することをためらわない。完全な日、完全な機械、完全な一致、完全な紳士、完全な花について話す。事実、ほとんどあらゆる場所でこの言葉を耳にするのだが、われわれの神の偉大な福音については別である。この場合、完全について話すと、人々は恐れてお手上げになり、「それは行き過ぎだ」と言うのである。使徒がここで述べている完全は絶対的な完全、神の完全ではないことを、すべての人が理解しているし、特に神学をかじったことのある人なら理解している(あなたが神学に触れることを恐れないよう私は希望する)。なぜなら、われわれは完全にされた後、地上だけでなく死後も成長し続け、その成長には終わりがないからである。しかし、われわれが神の完全に近づく地点に達することは決してないし、われわれが神々になることを約束している御言葉もどこにもない。われわれは注意深く自分のいるべき場所にとどまりたい。だから、われわれはその観点から完全について述べているのではない。われわれに要求されているもの、われわれが待つべき完全があるということなのである。神がわれわれに望んでおられるものをわれわれは賢く理解できる、と私は信頼している。ここで使徒が述べている完全は、創造ではなく贖いに由来する。あなたや私が今持っているものや将来持つもの、また成るものはみな、贖いを通して与えられる。われわれの始祖は創造による完全さを持っていたが失ってしまった。この失われた地所を再び獲得することはできなかった。それは失われた――決定的に失われたのである。われわれが今持っているものや将来持つものはみな、イエス・キリストを通して与えられる。そして、この午後われわれにとって最も身近で大切なものはみな、十字架の周りにある。そこから一歩たりともさ迷い去ってはならない。イエス・キリストの十字架を後にするような所は、地上にも天にもどこにもない。われわれが永遠にわたって享受することになる諸々の特権は、血潮によって買い取られたものである。時が流れて行っても、われわれは代々にわたって血潮を歌うだろう。屠られた小羊、流された血潮、われわれを贖うために自発的に命をささげて下さったキリストが、永遠にわれわれの話題である。御名に栄光あれ!


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