第七信 磐の上の家

 狭い門から入りなさい。なぜなら、滅亡ほろびにみちびく門は大きくて、その路は広いのだから。立派です、愉快です、便利です。宮殿の玄関のようです、大都会の広小路のようです。大いに心惹かれます。だからそこから入る者が多いのです。大抵はその方に押しよせます。これに反して、生命いのちにみちびく門は狭くて、その路は細いのだから。窮屈です、陰気です、貧弱です。墓地の入口のような、裏街うらまちの露地のような。少しも見栄みばえがありません。だからこれを見いだす者は少ないのです。何千人に一人とかいうほどの、極めて僅かの人たちだけがこれを選ぶに過ぎません。誰しも大きくて広い方が好ましい。けれども気をつけなさい、だまされぬように。そちらの行先にまつものは滅亡の谷だ。却ってこちらの見すぼらしい方にこそ輝かしい生命の国が横たわっているのです。生命は狭い門からです。

 また気をつけなさい、偽預言者たちに。彼らは羊の皮をかぶってくるけれども、一枚剥いで見れば、内は奪い掠める狼なのです。あなたがたを真理から虚偽へ、生命から滅亡へ、神から悪魔へと堕落させようとするのが、彼らの目的なのです。実に恐ろしい奴らです。だまされては大変だ。だが、よく気をつければ、見ぬくことは必ずしも難かしくない。その結ぶによって知ることができる。果というものは正直なものです。考えてごらんなさい。いばらから葡萄をとる者がありますか。あざみから無花果を摘む者がありますか。そのように、すべて善い樹は善い果をむすぶのです、悪い樹は悪い果をむすぶのです。反対に、善い樹は悪いを結ぶことができない、悪い樹は善い果を結ぶことができない、さればこそ、すべて善い果をむすばない樹は悪い樹ときめられて、伐られて火に投げ入れられるのです。偽預言者たちを見わけるのも同じことだ、やはりその果をよくしらべるのだ。すなわち彼らがほんとうに義をおこなっているかどうかと。彼らは預言者らしい言を発してはいる。しかし私にむかって主よ主よという者がみんな天の国に入るのではない。ただ天にいます私の父のみこころを行う者だけがそこに入るのです。そうでなかったら、その日々の実生活が義しいものでなかったら、たとえどんなに神の子らしい装いをしていても、伐られて火に投げ入れられるよりほかない。恐らくその日には多くの者が私にむかって言うだろう、「主よ、主よ、私たちはあなたの名によって預言したではありませんか」「主よ、私たちはあなたの名によって悪鬼を逐い出したではありませんか」「私たちはあなたの名によって多くの能力ちからあるわざをしたではありませんか」と。その時私は明白に彼らに言うだろう、「私はちっともお前たちを知らない。そこを退きなさい、この不法をおこなう人たち!」と。

 それゆえ、行うことが肝心です。行うかどうかによって、真実ほんとう虚偽うそかが判るのです、真実ほんとうに私の言を聴くものは、必ず行うのです、行なわないではいられない。これに反して、聴いて行なわない者は、実は聴かないのだ。心から私にき従う者ではないのだ。偽りの従者に過ぎないのだ。だから凡て私のこれらの言をきいて行う者は、ちょうど磐の上に家を建てたかしこい人になぞらえられるだろう。やがて来るべき日が来る。そのとき豪雨は沛然はいぜんとふりそそぐ。濁流は滔々と氾濫する。暴風はすさまじく吹きあれる。そうしてその家をうつ。けれども倒れない。それは私という磐の上にしっかりと建てられたからです。また凡て私のこれらの言をきいて行なわない者は、ちょうど砂の上に家を建てた愚かな人になぞらえられるだろう。雨がふる。流がみなぎる。風が吹く。そうしてその家をうつ。すると忽ち倒れる。しかもその倒れ方たるや惨憺たるものだ。

* * *

 イエスの言はようやく終った。人々は長いあいだ彼の容子ようすに目をそそぎながら、電気にでも撃たれたかのように黙然と聴いていた。聴いている間は自分の心もちもはっきりと意識されなかった。しかしいま声が消えてみると、彼らは何か大きな感じに圧されている。驚きである。それはイエスの話ぶりが学者のようではなくて、権威ある者のようであったからであった。

〔『旧約と新約』第一〇四号、一九二九年二月〕


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