敵の戦略

 ああ!サタンにはよくわかっているのである。神に栄光を帰すという単一の目的のために捧げられているすべての力を、信者が完全に且つ調和をもって用いるのを許すなら、その時、自分と自分の意図は最悪の結末を迎え、追いやられ、排除されてしまうことを。それゆえサタンは今や、自分の総力を挙げて、そして自分の知恵をすべて傾けて、狡猾な諸々の方法で、信者の思いを逸らそうとする。そして、言わば、信者の興味と愛情を個別化・区分化しようとする。なぜなら、このような手段によって、好都合な妥協や部分的容認の機会や、可能であれば同盟や提携の機会を自分のために確保することを、サタンは望んでいるからである。このように侵入することにより、サタンは、さらに不遜な侵略を行うための有利な立場を獲得する。サタンがこれに成功するとき、信者は天的交わりを奪われ、神の懲らしめにあうことになる。

 しかし、サタンには次のこともわかっている。自分の陰謀を進める上で、この信者をもはや初心者を扱うようには扱えないのである。また、きらびやかに飾り立てられたこの世の安ピカ物を掲げることによってこの信者の心を勝ち取ることはできないし、罪を犯すことを望む自己と望まない自己との間に新たな戦いを生じさせようと公に煽り立てることによって信者の意志を獲得することもできないのである。そんなことをすれば、直ちに正体を見抜かれて撃退されることを、敵は承知している。信者は信仰の盾を取って、自分の顔面を突くであろう。この信者の目的は神の側にあり、その霊的感覚を行使して、並び立つ善と悪とを見分ける。それゆえ、サタンはいつにもまして、自分を隠そうともくろむ。ひずめの足跡をすべて消し去って、自分の歩みを覆おうとする。自分の存在の可能性を、その弟子がたまたま忘れていたり、あるいは疑っているなら、しめたものである。

 サタンは今や、良心を通して意志に、理性を通して良心に、部分的知識の提示と半面の真理の示唆を通して理性に至ろうとする。今や目覚めて警戒している良心を罠にかけて、善悪の問題に関して間違った結論を下すようにさせなければならない。それは、所与の事例について、何が正しいのか或いは間違っているのかという初期の問題に関して、誤った情報を与えることによってである。頭脳に誤謬を抱かせることにより、心に罪を抱かせなければならない。頭脳または心のどちらかを嵐に巻き込むようなことを、サタンはあえてしようとはしない。成功を収めるには、非常に巧妙である必要があることを、彼は承知している。信者たちの想像という領域の中を彼は周回し、頭脳を通して心に、心を通して頭脳に回り込もうとする。それゆえ、諸々の誘惑は今や、光の天使たちの輝きの中で現れる。それは知恵や純潔さのように見えるもので輝いている。聖書的な外観、振る舞い、言葉遣いを装っている。

 その結果、今や、この信者に対してサタンは、かなり立派な論拠を伴う偽りの徳・正義・優しさという筋道で、偽物の霊性を大々的に披露する。大量の洗練された精細な区別により、理性と良心を丸め込んで出し抜かなければならない。何が適切で合法的なのかに関して、困惑するような頻度で、決議論的な示唆を吹き込まなければならない。それゆえ、天上で信者を対処するためにサタンが選ぶ領域は、堕落した肉ではない。彼は、悩み、生来の弱さ、無能さ、欠点、遺伝的特異性、敵の策略によって異常に強められて誤導されないかぎり道徳的に問題にならない性癖を用いる。こうして、信者の性質――抜け目なさ、注意深さ、望み、善意、独立心――の中に、サタンは攻撃する隙を見出す。これらの性格のどれかから発した行動と連携することにより、誘惑者はしばしば信者を促して傲慢な自負心や高ぶりに陥らせようとする。その結果は堕落である。

 あるいはまた、信者の性向――注意深さ、労苦、落胆、自己卑下、誠実さ――の中に、敵は信者に重荷を負わせるための隙を見出す。その重荷とは、自分自身の無価値さや無能力さに対する恐ろしい強烈な感覚である。この感覚のせいで、信仰の中枢は麻痺し、高ぶりのあらゆる面の中で最も巧妙なものの侵入をまったく防げなくなる。それは怪しまれずに信仰心の回廊の中に迎え入れられている、ほとんど唯一の類のものである――それは恵みを誇る聖人ぶった謙遜さである!最終的に、信者が生来あまりにも信じやすくて迷信的な場合、騙されて狂信に陥る可能性がある。


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